司教ヨセフ

「ねぇ、おじいちゃん。お話してよ。」
「ああ、わかったわかった。それじゃあ、あるビショップの話をしようかの。」
「ビショップって何?」
「司教のことじゃよ。僧侶呪文と魔法使い呪文両方を使いこなし、古の武器を鑑定することが出来る職業じゃ」
「わーかっこいいね!その話をしてよ」
「よしよし。昔ヨセフという司教が居たそうな・・・」



 私の名前はヨセフ。司教をしています。残念ながらまだ決まったパーティーに属していません。
 私の朝はお祈りから始まります。朝、神に感謝の祈りを捧げ、寺院に行き祈りを捧げ、そのあと酒場にいきます。別のお酒を飲みに行くわけじゃないですよ。酒場は出会いの場。ここで新しいパーティーが次々と生まれるのです。でも残念ながら私にはなかなかパーティーへのお誘いの話がありません。
 そこで何もしないのは時間の無駄なので、たまに鑑定の仕事をさせてもらってます。お金?いえいえ、お金は貰っていません。ありがたいことに、この国では冒険者と言うだけで普通に過ごす分にはお金が掛からないのです。(お金がない私などは馬小屋で寝ることになるのですが)

 ある日、私にもパーティーへの参加のお誘いがありました。何でも欠員が出たとかで、1日だけですが一緒に行って欲しいと。ありがたい申し出です。神に感謝します。私は準備を整え、地下に潜りました。初めての探索なので少し緊張します。



その数日後・・・


 俺の名はヨセフ。司教をしている。まだ俺を雇おうというパーティーは出てこねぇ。
 俺の朝は酒を飲むことから始まる。朝から飲む酒。これが俺の贅沢だ。軽くほろ酔い気分になったところで寺院に行く。行っても名簿に名前を書くだけだがな。寺院に顔ださね−と後で面倒だからな。それが終わったらとっとと酒場に直行だ。ホビットの店員にコインを渡し、冷えたビールを持ってこさせる。だいぶ歩いたので喉はカラカラだ。乾いた喉にビールを注ぐ。朝から飲むビールは美味い。
 今の俺の仕事はもっぱら酒場での鑑定だ。金?もちろん取るさ。だが、ボルタックの2割引だ。良心的だろ?おかげで鑑定の依頼は俺のところばかりにくる。金が儲かって儲かってしょうがないぜ。
 泊まる部屋はもちろんスイートルーム。馬小屋で寝てたのが馬鹿馬鹿しくなるくらいスイートルームのベッドは寝心地がいい。今日も俺はスイートルームに女を呼び楽しい一夜を過ごす。


その数日後・・・


「ねぇ、おじいちゃん、おじいちゃん。このヨセフって人は2重人格なの?」
「いや、そうではないんじゃ。地下迷宮は人の性格を真逆に変えてしまうほど恐怖と狂気に満ち溢れたものなのじゃ」
「へぇー。地下迷宮って、めっちゃ怖いね」
「そうじゃ。地下迷宮はめっちゃ怖いんじゃ。興味本位で地下迷宮にもぐってはいかんぞ。それじゃあ続きを読むぞ」

その数日後・・・


 ある日衛兵が二人、突然俺の前に来てこういいやがった。
「お前がヨセフだな。ご同行願おうか」
「なんのようだ?」
「ボルタックに内緒で酒場で金を取って鑑定してただろう!」
「なんだって?証拠でもあるのか?」
「もうネタはあがってんだよ。さあ、来い!」
 俺はゆっくりと重い腰を上げた。静かに呪文を詠唱しながら・・・
「カティ・・・」
「モンティノ!」
 俺がカティノを唱える前に衛兵のヤツはモンティノを唱えやがった!
「むぐぐぐぐ」
「よくいるんだよね。カティノを唱えて逃げようとする魔法使いが。さあ、来い!」




「こうしてヨセフは刑法第25条。ボルタック商店以外でお金を取って鑑定をしてはいけないに引っかかり、投獄されてしまいましたとさ。めでたしめでたし」
「おじいちゃん。面白かったけど、このお話は夜寝る前に読むお話には向いてないね」
「ん?そうじゃったか?まあ、そんなことよりもう寝るとしよう。よく眠れる呪文を唱えてあげるからの。カティ・・」
「モンティノ!」
「むぐっ?うぐぐぐうぐ!?(何?もうモンティノを習得しておるのか!?)」
「もうカティノ無しでもちゃんと寝れるよ。それじゃあ、おじいちゃんお休みなさーい!」

 〜fin〜

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