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LとT
 〜ウィザードリィっぽいあいつとあいつ〜

序章

 辺りは静寂に満ちていた。聞こえる音といえば葉にたまった水滴が池に落ちるときの音ぐらいなものだった。
 池の周りはゆうに100年以上経っているであろう巨大な大木が犇めき合っていた。まるで泉を覗き込むかのように巨木たちは泉を覆っていた。
 池の中から金色の光が漏れる。その光は辺りを神々しく見せるとても清らかな光だった。光は泉の奥底から水面へと徐々に徐々に上がってきた。
 やがて光が水面へ顔を出すとそこで光は一旦止まる。新しい世界へ抜けて目くらましでも食らったように。だが、光はこの世界にも慣れたのか、またゆっくりと上昇を始めた。まばゆいばかりに輝いていた光は空中へ抜けると、一旦その光を失った。光が消え、正体を現したかとおもったその瞬間、その物体は空高くへ飛び去ってしまった・・・

一の章

 森の遠くで金属音が聞こえる。剣と剣がぶつかり合う音だ。その音はときに鋭く、ときに鈍く戦士の旋律を奏でる。最後に今までとは違う鈍い音が聞こえた。その後一人の男が草むらに倒れこむ音が聞こえる。勝利を手にした男がつぶやく。しかし、勝利したことに対する喜びは微塵も無い。
「ふー、かなり厄介なやつだった。こんなレベルじゃグレンになんてののしられるか、、、」
 その男は人間だった。あえて人間というのは他にも種族が存在するためだ。人間としては二十歳前の青年。もっとも体が動くときである。
 倒れた男はオークだった。しかしただのオークではない。他のオークよりもさらに大きいオークロードと呼ばれる部類に入る存在だった。
 オークロードと1vs1で勝てるのはなかなかの腕前だ。同じ年頃の男を連れてきてもなかなか勝てるものではない。 青年に駆け寄る細い影。しかしその足取りはしっかりしている。新たな敵かと思い振り返ると、そこには見慣れた少女がいた。
「エル!こんなところにいたの!?怪我は無い?」
「あぁ、怪我は無いぜ。それよりグレンはどうした?」
「向こうでブロブと戦ってるわ。呪文が効きにくくて苦戦してるのよ!早く手伝って!」
「よーし、俺の出番か。まってろよグレン!」
 エルと呼ばれた青年はすぐさま少女の来た方向へと走り去っていった。

二の章

 その青年はエルと呼ばれていた。幼い頃から両親の英才教育のおかげで魔法学校に進学することが出来た。魔法学校ではかなりの好成績を残したが、魔法を覚えるのが途中で嫌になり、今では戦士として剣を振るう方がもっぱらの仕事に変わっていた。しかし親からの遺伝もあり、生まれ持っての魔法のセンスは並みの魔法使いのそれよりも優れていた。その為、かなりレベルの高い呪文も扱うことができる。
 その少女はチィーと呼ばれていた。本名はもっと長いのだが、本人がその長い名前を嫌っていた。その為仲間にはチィーと呼ばせていた。小さい頃信心深い母親に連れられて教会に通う日々が続いた。しかし彼女には僧侶としての資質よりも魔法使いとしての資質のほうが高かった。教えもしないのに簡単な魔法を使いこなし、魔法学校に通う頃には他の生徒よりも一つ上のレベルの呪文を扱えるほどだった。エルとは魔法学校の同級生でお互いライバル心を抱く仲だった。
 グレンは今でこそ僧侶をしているが、昔は戦士だった。その名残か、僧侶でありながら武器を持って戦うことが多い。最近は使えもしないのに魔法使い呪文にも興味を抱き、空いた時間があれば魔法使いの呪文を研究している。

「あー、今日は疲れたぜ。かなりの数のブロブを叩いたからなー」
「俺が駆けつけるまでも無かったな。あたり一面ブロブの死骸で歩けたもんじゃなかったぜ」
「いやーエルがいて助かったぜ。なんせやつら呪文の効きが悪いからなー。そういうときは戦士の出番さ」
 2人は酒場で酒を飲みながら今日の成果を語りあっていた。若い戦士とその戦士よりは少し年上の僧侶だ。
「でもブロブなんて珍しくないか?あまり見かけないヤツだよな」
「まあ、最近の異常の一つじゃないか?天候も変わってるし、その影響じゃないかな?」
 僧侶はそういうとグラスに注がれた泡だらけの酒を一気に飲み干した。
「確かにそうかもな。魔物の生態系も少し変わってきたのかもしれない」
 戦士が話し終えるとコップに注がれた酒をチビリとなめる。酒は得意ではないらしい。
「はぁー今日は疲れたわ。マスター、お酒とポテトサラダを出して」
 2人の後ろから若い女の声がした。チィーだ。
「チィー、シャワーですっきりしたか?」
 声をかけたのはグレンの方だった。
「ええ、おかげさまで。あなたたち臭いわよ。早くシャワーを浴びた方がいいわ」
「もう一杯酒を飲んだらそうするよ」

三の章

「ランタンに、地図用羊皮紙に・・・あとは何がいるんだっけ?」
「メモを見ろよ。さっきメモを書いてただろ?」
「ああ、そうだった。えーと・・・」
 エルとチィーは明日から始まる探索の為の買い物に来ていた。
「ねえ、ちゃんと手伝ってよ!」
「え、、、ああ・・・」
 エルが力ない返事で答える。エルにとって買い物に付き合わされるのは、あまり好きなことではないらしい。
「ああ、あったわ。後は、、、」
「なあ、チィー。俺、あそこのベンチで座ってていいか?」
「なにジジクサイこと言ってんのよ!」
「えー、だって疲れたもん。」
「なにが”疲れたもん”よ!ほら、さっさとおわらさないと日が暮れるわよ!」
「はぁ、、、女の買い物に付き合うのは疲れるなー」
「何か言った?」
「何も言ってません」

四の章

「相当腕が立つんだって?」
「それほどでもないさ。君の噂の方がよく耳に入るよ、紅(くれない)のエル。」
 エルが話し掛けたのはジャニスという男だった。グレンの昔の知り合いで、今彼がいたパーティーは解散してしまったらしい。仲間が欲しいと思っていたエル達一向はジャニスを仲間に入れたかったのだ。
「職業は何をやってるんだい?」
「今は侍さ。昔僧侶をやってたこともあったんだが、どうも性に合わなくてなー。マディを覚えた辺りでやめちまったよ。今ではちょっと後悔しているけどな。マスターレベルまで頑張れば良かったって」
「両方唱えられるなんてすごいね!その上剣の腕まであるなんてすごすぎるよ!」
「いやー、そんなことも無いさ。まだまだ刀の扱いに慣れて無くてねー。剣の道はまだまだ入口に入ったばかりさ」
 エルとジャニスの話が尽きることは無い。エルは万能のジャニスに羨望の眼差しで次々と質問をぶつけた。ジャニスもそんなエルの雰囲気を察して気持ちよく質問に答えていた。二人はその晩、かつての友に再会したかのごとく語りあった。

五の章

 ジャニスを加えてさらに戦力が増したエル達一行は再び地下の探索を続けた。
 いつものように地下に潜る。地下5階に差し掛かったところで、見知らぬ女がうずくまっていた。
「大丈夫か!?」
 エルが話し掛ける。
「うぅ・・・」
 どうやら女は傷を負っているようだ。
「怪我をしているようね。他のメンバーはどうしたのかしら?」
「とりあえず傷を治そう。・・・・・・マディ!」
 マディを唱えると女が顔を上げた。
「マサヨンじゃないか!」  驚きの声を上げたのはグレンだった。

六の章

「ギュラマテティタノバダクレメスバンダミソギャーディス・・・」
 絶対に唱えられてはいけない呪文だった。唱え終えれば必ず誰かが死ぬ呪文だった。いや、生き残る人数の方が少ないかもしれない。
「く、誰かあの呪文を止めてくれ!!」
 そのとき既にチィーは呪文を唱えていた。敵の呪文に対抗するにはこの呪文しかなかった。閃光とともに呪文が解き放たれる。
「・・・神々よ、我が願いを受け入れたまえ!ハマン!」
 チィーがその呪文を唱えた瞬間、魔物達の姿はどこにも無かった。さっきまで剣を交えていたのが嘘のように辺りは静まり返っている。
 戦いに勝利したことを理解したエルから言葉がもれる。
「フッ、さすが稀代の天才魔術師と呼ばれるだけのことはある。敵にまわしたくはないな!」
「運が良かっただけよ。もう少し呪文を唱えるのが遅かったらこちらがやられていたわ」
 そういうとチィーは今唱えた呪文の反動を押えるように、ゆっくり呼吸しながら両膝をついた。
「違いない」
 エルもチィーの意見に賛同した。あの時動けたのはチィーだけだった。グレンもジャニスも敵と対峙していて、一瞬でも気を抜けばその瞬間やられる、そんな緊張状態だった。

七の章

「チィー、これからどうするんだ?」
「え、別に予定はないわ。目的も失ったしね」
「これを受け取ってくれないか?」
 そういうとエルは金色に輝く小さな指輪をチィーに見せた。
「えっ!これって・・・」
「ここから少し行ったところに小さな村がある。そこに家を建てて、いっしょに暮らさないか?」
 そういうとチィーはうつむいたまま黙ってしまった。エルはそんなチィーを見つめている。
 やがてチィーが少し震えた声で話し出す。
「わ・・・わたしでいいの?こんな気の強い女でいいの?」
 チィーの目には涙があふれていた。
「なーに言ってんだよ。それもお前の個性じゃないか。もちろんいいぜ!」
「・・・ありがとう」
 チィーの目からひとすじの涙がこぼれ落ちた。
「浮気なんかしたらマカニトだからね」
「ばーか、俺にはマカニトなんてとっくに効かないよ!」

 〜fin〜

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